日産パオのマフラーを5ZIGENと開発!!その物語を紹介。

日産ラシーン海写真 日産パオ テラコッタ
2010.1.1
開発コンセプト「大人らしいマフラー」
2009年8月、5ZIGENインターナショナル株式会社とスピードウェル社が共同で Be-1&PAO用の低燃費(エコ)で高出力、そして純正のマフラーデザインの良さを守った 大人らしいマフラーの開発に着手した。
スピードウェル社と熱くコラボレーションする5ZIGENインターナショナルと言えば、 カーレースと共に製品開発を行う日本でトップクラスのマフラー製造企業。 カーレースという極限で過酷なフィールドの中からフィードバックされるデータとノウハウを元に 開発される製品は最高の信頼性と機能性である。
5ZIGENは今年度はTEAM5ZIGENとして4年ぶりにスーパー耐久シリーズにNSXで参戦。 前回参戦した際は、優勝2回を含む4度の表彰台を獲得している実績ある企業。 もうお解りだろう。5ZIGENは日本の自動車マフラーのパイオニアなのである。
スピードウェル社へは5ZIGEN矢野氏が担当。 そんじょそこらのマフラーとは一味もふた味も違う本当の出来栄えを目指す為、 材料の選定、デザイン、価格など全てにおいて緻密にミーティングが行われ、 開発にあたりスピードウェル社のコンセプトを打ち立てた。

『マフラーを設計する=エンジンの持つポテンシャルを最大限に引き出す』
(1)純正を彷彿とさせる往年のデザインを踏襲する。
(2)排気効率の最適化により低燃費で全域でパワフルな出力特性を実現する。
(3)確かな材質により耐候、耐久性を高い次元で両立する。
(4)純正よりはほんの少し大きいが大人な音色を追求する。(限りなく静音設計)
これが純正のマフラーだ。 くねくねうねっている(後ろの足回りのホーシングを避けるようになっている) しかし、このウネリも実は排気効率に邪魔かといえばそうではない。 より低速でのコシを増すためにも(パイプが長くなればなるほど低速が付く) 必要なのだという。 この辺の取り回しも検討中である。
これが純正のサイレンサー部。俗称タイコ。 パイプの長さや太さと共にタイコの内部を味付けすることにより 本来のMA10Sエンジンの性能を余すところなく発揮させるのだという。
これがマフラーエンドパイプである。 出口の形状が非常に小憎い演出だろう。 実にこの出口形状を製造しようものなら型を一からおこそうものなら、 その金型の費用は50万円を超えるのだというから目玉が飛び出るほど高い。 しかしパオのマフラーはこの部分が醍醐味だろう。 この形状が出来なければスピードウェルではない。 ウェル的、Be-1、PAOのマフラーの命はココに宿ると言っても過言ではない。 『スピードウェルがこだわるマフラー出口にはこの形状が絶対に必要不可欠である』 と、5ZIGEN矢野氏とデザインの点でせめぎあいが始まるコトとなった。
そして、5ZIGEN矢野氏が用意してくれた材料がこれだ。 メインパイプの材質の違いが3本とマフラー出口。
マフラーの出口のこの形状が遂に。
『通称:外カール』
なんと5ZIGEN矢野氏の努力の末、この出口形状カールが実現する事となったのだ。 スピードウェル社がこれまでマフラーを製作しなかったのは この出口形状がいろんな都合上で外カールに出来なかったというのが第一の理由。
『こだわる部分が出来ないようであれば製作する意味がない』 (ウェル談)
しかし今回は違う。
まさに5ZIGENとの熱いコラボレーションで生まれようとして言うマフラーは 逸品になることに間違いはないだろう。
第1章

『マフラーの材質を一から勉強する』

材質を一から勉強し吟味する事から始まる。
左下 アルスター材
中央 SUS436
右上 SUS304
左下のアルスターとは鉄にアルミの粉をちりばめた物だ。 ただ単に鉄だけでは錆びるが、アルミの粉をちりばめることにより 酸化を防いで錆びにくくしている。(しかし経年劣化で錆びる) Be-1、PAOの日産純正マフラーはこのアルスター材が使用されている。 中央のSUS436といえばこちらはステンレスになるのだが、 近年自動車マフラーに使用されるいわゆるマフラー専用に開発されたステンレスだ。 特に耐熱性が優れ(熱が加わっても膨張しにくいという性質)マフラーのパイプ部に良適材である。 右上のSUS304といえば、耐食性の非常に優れたオーステナイト系ステンレス。 耐水性が良く、アルスター、SUS436、と比べ一番光沢のある見栄えの良い材料であるがゆえ マフラーのサイレンサー部(タイコ)に向く。
ではマフラーの材料などの仕様を発表しよう。 (リヤピース) メインパイプ 42,7パイ 材質/SUS436
消音器 150パイ×300 (隔壁構造)材質/SUS304
出口 38パイ (外カール形状)材質/SUS304
Be-1(BK10)、PAO(PK10)共に取り付けが可能である。
出口の口径は純正に限りなく近づけ、しかし若干のサイズアップをはかり、 『交換してません』と、見せつけはするが、材質や若干の寸法の差(味付け)で どこか誇らしげに主張する『大人らしいマフラー』に仕上げた。
第2章

『製品のプロダクトに大きく焦点を当てる』

まず、Be-1、PAOの外観だが、チーフデザイナー古場田良郎氏によるデザインは 見る人の心を奪う完全で、素晴らしいエクステリアデザイン。 これは一つずつの単体パーツのデザインが互いに協調しあい成立している。 マフラーのデザインもその単体パーツのデザインの一部でもあるという考えが スピードウェル社にはある。 そして、先にご覧頂いた出口形状『外カール』にこだわったのである。 さらにプロダクト的にこだわったところが溶接方法。
画像は純正と同じ溶接の仕上げを施したパターン
マフラーのタイコとエンドパイプ『外カール部』を接合する この溶接部をご覧頂きたい。 実に赴きのあるクラシカルな溶接だろう。 これは半自動アーク溶接というもので、溶接ワイヤーを電気で溶かして金属同士を 溶接する方法である。 大きな溶接ビード(もりっとした所)が形成されるが 半自動アーク溶接の特長の一つ。 このもりっとした溶接ビードがなんともウェル的。おもむきがあり 大好きなのであるが、ココで大きな壁にぶち当たるコトとなった。 『はたしてステンレス製のタイコを使い、 溶接ビードが出来る半自動アーク溶接で仕上げても良いのか? この溶接ビードの見栄えが良いのはスチール製のタイコだからだろう』 要するにスチール素材をタイコ、パイプ共に使い、この半自動溶接で仕上げている。 それが、純正マフラーの良さでもある。 ウェル的解釈、これがおもむきがあるという一つの大きな答えである。 しかし、今回はスチール素材が故の弱点を克服するために ステンレスという高価な素材を使い、マフラーを製作する訳だから、 ステンレス素材に合った、ステンレスのマフラーとして成り立つ溶接をしなければ本当の良さは生まれない。 そして出た答えがコレだ。
TIG溶接だ。 これはアーク溶接の一種であるが融点の非常に高いタングステン棒からアークを出し、 その熱で母材を溶かすのである。 両手を使うため熟練の技術が必要であり、難易度は高い。もちろん加工賃も高くつく。 しかし唯一、溶接作業時火花(スパッタ)が散らないという特徴があり、 ステンレスのタイコがスパッタにより汚れないという利点があるのだ。 (純正の溶接部の廻りをご覧頂くと解かるが、黒くすすけているのがスパッタだ) より上質に大人らしく、おもむきのある、Be-1&PAOの外観デザインを損なうことなく 本当に似合う純正部品対象交換マフラーになりそうな予感がする。
そして、その時。
スピードウェル社の製作するマフラーにはJASMA (日本自動車マフラー協会)の登録がなされるのである。 これは国土交通省令で定められる、道路運送車両の保安基準第3条(最低地上高) 第30条(騒音防止装置)、第31条(ばい煙、悪臭のあるガス、有害なガス等の 発散防止装置)の条項への適合性に対し、JASMA基準に適合する商品として、 Be-1、PAOへの装着に対し、車両検査の対象品として基準を満たす商品である コトが認められた証。 要するに車検に胸を張って合格するマフラーだという。 これで、上質に大人らしくといったハードルに一歩近づいたような気がする。
第3章

『音質、音量にこだわる』

まず出口形状の仕上がりをご覧頂こう。 ステンレスで仕上げているが、純正のほのかなかほりが漂う 『外カール』という仕上げが、最高のデザイン性能を約束する。 純正品より若干ではあるが直径がやや大きくなっているところが 交換しましたよと言わんばかりに小憎い演出でもある。
本邦初公開となったか!!5ZIGENのシャシダイナモだ。 後にこの場所で馬力&トルクの測定も行う事となる訳だが、 なぜココまでやるかと申せば、製品造りに対して絶対の自信があるという事と もう一つは本当に良い物を目で見て確かめてもらいたいからだ。 ココまで追求したマフラーは他には存在しないだろう。 今は音質と音量という事でシャシダイナモは不要なのだが
5ZIGEN矢野氏が用意しているのは音量の測定器。 法規にも定められた方法で音量を測定する。
これがコンデンサーマイクという物。 コンデンサーマイクとは指向性に優れ、周囲の音は拾わず 直線的に向いている音のみを拾うという性質がある。 そう、マフラーの音のみを拾い、音量を測定するという公算。 本来なら野外で行うべきなのだが、測定が夜間だったということで暗く 今回は5ZIGENの明るいピット内で行った。 それでは最初に、試作であがったマフラーから測定を行う。
これが、法規で定められたマイクの測定位置。 全てはこのルールに則り測定が行われる。
これが、噂のウソ発見器ではない。 コンデンサーマイクから拾った音量のデーターがこの測定器にグラフとなって書き込まれる。 そして、そして。
これが、回転計(タコメーター)だ。パオにはタコメーターが存在しない。 さらに、存在していてもどの車種も本当の回転数をきっちり表示出来ているとは限らない。 そこで、本気のタコメーターの登場となった。 これで、主役は揃った。
遂にエンジンに火が入れられた。 マフラーに熱がこもる。 そしてPAOのアイドリングが始まる。 子気味よいドライでローピッチなエグゾーストノートがウェルの心臓に鼓動する。 純正とは違った音質がなんとも交換しましたよとアピール。
回転は一気に4500RPMまで上昇。
PAOの最高出力は6000RPM 52馬力。
測定には最高出力の75パーセントまで回転を上げる必要があった。 どんどんマフラーに熱がこもる。 そして、音量の測定結果が出た。
グラフ上でなんと85db。 おお〜静音ではないか。 音質はふくよかなローピッチでさらにドライ。そして大人らしくエレガントな印象。 まとまった音がすこぶる素晴らしく、格段に音のつぶが揃っているので芯があり、 音量は上がったなと思っていたのだが、予測に反して音は静かであった。 ココで音質と音量は別物である事も確認出来た。 この試作時点ではベターである。 次に純正のマフラーをテスト致そう。 今回は、同じ条件をという事もご覧頂かないと気がすまない。
という事で、並べて測定を行うことになった。 どうだ、ココまでご覧頂ければ本気度も伺えるであろう。
測定結果がこれだ!! 右から純正マフラーの音量、中心が試作マフラーの音量。 なんと、両マフラー共に85dbと全く同じ音量という測定結果が出た。 音量は変わらないが、試作マフラーは音のつぶがそろい 芯がはっきりしているので音量が上がったと勘違いする。 しかし音量が純正と同じとあらばこれ以上ない出来栄え。 矢野氏曰くある程度の計算でタイコを試作したということだが、 ココまで理想通りのサイレンサーに仕上がるとは恐れ入る。 という事で、試作マフラーの音量測定をご覧頂いたが、 あくまでも、純正マフラー交換対象品という 材質、デザイン、音質&:音量を高いハードルで求めた結果がココにはある。 さらに馬力&トルクが増す=待ち乗りで燃費が良くなるという理論を元に 製作を進め出来上がったマフラーは全てにおいてバランスが良く 名器になること間違いないであろう。
第4章

『小さく大きなコダワリ』

実はご覧頂いている試作マフラーは第2号機でる。 なぜかと申せば第1号機はお見せできなかった訳ではないのだが、 スピードウェル社的にどういう所をこだわっていったのか 比べる物がないと不透明であったからだ。
試作のさらにプロトタイプである第2号機マフラーだ。 おお〜まるで純正のそのままのようなスタイルでお披露目となったわけだが、 実はココに至るまでには数々の苦労が存在するのであった。 もっと近くでご覧頂こう。
こちらが試作第2号プロトタイプのアップ。 実は純正より出口パイプは太いのだが、ミリ単位ゆえ解かりづらいのが特徴。 そして、まだ磨きあげてはいないがステンレス素材の輝きが 実は交換してますと言わんばかりに主張する。 だが、本当に見てもらいたいところはそれだけではなかった。 試作第1号機をほぼ同じアングルでご覧頂こう。
こちらが試作第1号機だ。 そう、1号機と2号機との違いは皆わかるであろうか? 解かった方はすんごい。 ではお答え致そう。 実はマフラーの出る角度が違うのだ。 第1号機はクルマに垂直に出るのに対し、第2号機は外方向へ 角度が向けられている。 これはまだ試作段階だからタイコの見栄えは気になさらず、 デザインの観点でご覧頂きたいのだが、 そう、実は垂直にマフラーが出ていると、なんとも マフラーの出口が内側に向いているように見えるのだという。 それは古場田氏によると『視錯覚』による物だという。 不思議なものだ、ウェルもマフラーは垂直に出たら良いと考えていたから、 試作第1号機はそうしたのだが、実際は異なった。 実はBe-1&PAOの純正も外へ向かって製作されているコトに気づき驚いた。
写真でも解かるように第2号機のタイコ部はボディーが描く弧にそって 外側に角度を付けるという大きな変更が入り、試作が繰り広げられている。
小さなコダワリだろうが、やはり本来のPAOの良さを損なわないが為に 努力と注意が必要である。
写真上が第1号機マフラー、下が純正スティールマフラーだ。 そう、第1号機マフラーと純正マフラーのタイコの大きさや、 パイプの取り回しが少し違う事に気付くだろう。 後ろから見たときは純正のように見える。 まさに効率をも重視した本気のマフラーなのである。
(ココでの効率とは、トルク、馬力、燃費、耐久性、それに加えデザインの事を指す)
これが純正マフラーのタイコ部。
これが、第1号機マフラーのタイコ部。 どうだ、パイプの入り口の場所も違うであろう。 もちろんタイコの容積も違い、なぜかと申せば 効率を重視しての事ではあるのだが、 なんとスピードウェル社のマフラータイコ部には 消音するためのグラスウール素材を99パーセント使用しないがために 隔壁構造を採用するという。 隔壁構造は5ZIGENの極秘データなのでお見せすることは出来ないのだが。 なぜグラスウールを使用しないかと申されれば、 マフラーの消音によく使われるグラスウールは 実に排気からなる水を良く吸収(表面積が多くなる)し、 マフラーに水を多く貯めてしまうのであった。 『ステンレスだから、水が溜まっても錆びなくて走っているうちに出るから大丈夫!』 などとは素人の考え。 グラスウールは水気を含んだ状態から熱がこもると、もろくなり、劣化が激しいのだという。 グラスウール素材に消音材として製作されたマフラーは経年劣化に耐えられない。 本当に長く愛されるマフラーとして製作しているため当然の結果ではあるのだが。 5ZIGENのノウハウによりさらに良いマフラー造りが可能となった訳である。 さらに今回はマフラーとボディーとを繋ぐステーにも改良が施されるコトとなる。
第1号機マフラーのステーをご覧頂きたい。 こうして丸い鉄線がタイコに直接取付けられていた。 この光景は社外品マフラーに良く見かける風景なのであるが、 タイコに直接溶接留めされているため、 経年劣化によりタイコとステーの溶接部付近にクラックが入り 排気漏れをおこす可能性があるのだという。 もちろん5ZIGENで製作されているマフラーにはこの取付け方でも 対策が施されて大丈夫なのだが、このステーであればBe-1&PAOのプロダクト的にどうだろうという見解に。 そして、論議の末出たのがこの答え。
なんとマフラーを特製バンドで吊るという。 遂に往年のスタイルがココに蘇えるコトとなったのだ。 このバンドだけでもプロダクト感が増すであろう。 本当に仕上がりが楽しみな一部でもある。
マフラーの歴史が今始まろうとしている。 これで無ければBe-1、PAOではない。 言いすぎた、だがしかしこういうところを惜しまず製作する事に スピードウェル社は意味を感じている。 このマフラーには5ZIGENとスピードウェル社の事細かな配慮が施されたている。 本当にクルマのためになれば、おのずと皆のためにもなるであろう。 純正を継承さらに追求し、その延長上で性能を求めた大人らしいマフラー。 それがこの形(答え)であると信じている。
第5章

『試作マフラーを振り返る』

8月下旬から始まったこのマフラープロジェクトはすでに一ヶ月を要し、新たな段階に突入。 すべてはBe-1&PAOの本来から持つ素晴らしいところを 失わない仕上げを施す(純正交換品としての品格を求める) という開発コンセプトの元、試作実験が進められてきた訳だが、 この一ヶ月でいろんな壁にぶち当たったのであった。 まずは軌跡をご覧頂く事に致そう。
初の試作機としてパオに搭載されたスピードウェル監修ステンレスマフラーだ。 走行テストではかなりの実力を発揮し、低速でのトルクの増大と 加速性の向上で十二分に体感が出来る仕上がりであった。 音量も純正と全く同じ85dbに抑えられ、タイコの容積が若干 大きくなったがゆえに低音が太く大人らしい音が奏でられた。 しかし、一定回転で内部で共鳴が起こりタイコを造り変えるコトとなった。
試作2号機だ。 1号機と違う点は大きくはタイコの中身。 共鳴とコモリを抑え、低回転から高回転までスムーズな加速&音質が向上する。 2号機はそれに加え、クルマに対して垂直に向けていたタイコが PAOのボディーの弧にあわせ、外側に若干振られた。 さらにマフラーの取付けステーをタイコの中心部から 端に移すという処理が施されるコトとなる。 これによりタイコはBe-1&PAOの純正のタイコと同じ向きになり、 取付けステーの車両後方からの見栄えも良くなったである。
なぜ取付けステーの位置を変えたかと申せば、マフラーを後ろから覗き込んだ時、 鉄棒が純正の吊りゴムに吊られているのが目に付き、 いかにも現代風のマフラーというような雰囲気で、見る人に伝わってしまい、 それがスピードウェル社的に受け入れられなかったのだ。 その点を改良を施した2号機のマフラー取付けステーは後ろから覗き込んだ時には 見えなくなったものの、写真でも解かるように下から覗けば その異様な取り回しが確認出来るのである。 プロダクト的な感覚からは往年の名機と呼ばれるにはまだまだ遠き道のりだ。 そして、さらなるマフラー取付けステーの変更が加わる事となった。
遂に3号機が10月1日に完成。 次の日の事である。 鉄棒での吊り下げを廃止し、マフラーにステンレス製のベルトを巻き、 さらにベルトに対しステンレスの板にナットを溶接加工を施し 純正に非常に近い取付けステーが完成した。 車両側への取付けも純正ボルトで吊りゴムに留めるという まさに純正と同じ取付け方法を採用する。
ベルトというギミックがPAOのその佳き感覚と調和する。 プロダクト感が一層際立ち、持つという喜びが沸々と沸いてくるであろう。 ココまで追求出来たのは、間違いなく5ZIGENのクラフツマンシップがあっての事。 矢野氏とエンジニアの方々には難しいお願いばかり聞いて頂き、ただただ脱帽である。
横からの撮影。 わざわざベルトでマフラーを固定するというコダワリの一つは往年の仕上がりに。 もう一つは耐久性の向上が上げられる。 そう、取付けステーをタイコに直接溶接し、取付けるようであれば 経年の使用から溶接部付近にクラックが入りそこから排気漏れを 起こす可能性がある、と5ZIGENからの忠告が入る。 そういう意味ではこのマフラーベルトを使用する事により コストは大きく掛かるが使用耐久年数は他に群を抜くのであった。 まさしく名器と呼べる風格と耐使用年数の向上が 一石で鳥を2羽落とせる。俗に言う『一石二鳥』なのである。
↑もう一度1号機をご覧頂きたい。 取付けステーが今となってはなんとも無様。 この取付けステーがこうなる。
ボディー側への取付けは純正のボルトをそのまま使用し、 純正と全く同じ感覚なのである。 しかし、この3号機でも事件が起こった。
よくよく目を凝らしてマフラーをご覧頂きたい。 左の取付けステーが、丸見えではないか!! ウェルもこれで良いと思い製作にGOサインを出したのだが、 Be-1、PAOチーフデザイナー古場田氏の名言が頭を過ぎった。 『デザインは性能である』 そして、今朝早速に図案を描き5ZIGENにFAXを送り取付けステーのデザインを変更を入れた訳だ。。 本当にどたばた騒ぎ。
上がA案。下がB案である。 5ZIGEN矢野氏とすぐさまミーティングが行われ、答えが出た。
先ほどのB案がおおむね採用されるコトとなり、 ステーの入替えが即日行われる。 上の写真でご覧いただけるように、下のステーは廃止され 上のステーをベルトに溶接。さらにステーが2枚重ねになり補強 されると言う。 ステーが2枚重ねになるところがまたプロダクト感が向上する瞬間でもあろう。
第6章

『往年のマフラーバンドの完成』

写真44.jpg 先ほど、ご覧頂いた3号機である。 マフラーのタイコ部左をよくよく見るとマフラー取付けステーが 見えるのが伺える。
このステーが鎮座していたのであった。 しかしながら、吊り下げゴムからマフラーのタイコまでのステーが長く、 もっと短くすればさらに剛性も上がり、見栄えも良くなるという考えにより 5ZIGENの矢野氏とミーティングが急遽開かれた。 そして、ウェルが下手なりに製図した案を製品にして頂いたモノがコレだ。
この上の図案を元に剛性やら見栄えを追求し 出来上がったマフラー取付けステー。
これが待ちに待った取付けステー(マフラーバンド)だ。 ステーにナットまで溶接が施され、純正のマフラーと同じ方法での取付けを 可能とした。プロダクト的には一番良い結果であるのには間違いない。 なぜならば純正交換仕様とスピードウェル社では位置づけているのであるからだ。
しかしながら、12時、もとい、一時は断念をも考えていたウェルであったが、 せっかく製作するのであれば、スピードウェル社的に 自信を持って皆に提供出来、喜んで頂かなくてはならない。 マフラー出口は外カールにし、サイレンサーにはベルトを巻付け、 角度も純正さながらに調整を施すという試作に試作を重ね 往年と言える仕上がりを追求しココまで来たのだから、 最後までコダワリを通すしかなかったのである。
そう、ステーはマフラーとボディー側吊りゴムを最短距離で繋ぐと言う。 さらに、ステーは二枚重ねを採用。 これだけでも剛性面では3号機より飛躍的に上昇。 それでは本邦初公開、マフラーの姿見をご覧頂こう。
すべてにバランスが取られまとまった仕上がりに。 このプロトタイプを元にオールステンレス製で製作される。
第7章

『リプレイスメントという名』

さて、遂に5ZIGENと共同で長期にわたり開発を進めてきた ECOと往年のデザインを目指した大人らしいステンレス製のマフラーが完成となり 晴れてお披露目となる。 そして、出来上がるにあたり、当初の計画から少し変更が加わったので 当社がマフラーを製作したお話も交えてご紹介致そう。
これが現在装着されている純正マフラーである。 ご存知の方もおられるかおられないか、このマフラーは 日産の耐久性向上の対策品マフラーで御座ろう。 と言うのは、マフラータイコの下から両側面にかけて、ごつい鉄板が 覆われ、そこに吊り下げステーが溶接されているという。 なんともごつい鉄板がどこと無く寂しい。 Be-1発売当初のマフラーであればタイコにバンドが巻かれ バンド自体がマフラーの吊り下げステーになっていたという そういう造りがBe-1やPAOらしく見ているだけでも楽しみなものであった。 スピードウェル社的には本来の純正の良さが好みで、この対策品は いくら今の純正と言えども好みとは言えない。 と言う事で、製作途中にマフラーをバンドで吊るという ギミックが必要となったのである。 バンドを使用するというコダワリには意図があった。
5ZIGEN&:スピードウェル社両者がこだわったステンレスマフラーだ。 フロントピースとリヤピースが存在する。 なぜフロントとリヤ両方を製作したかと申せば、 Be-1、PAOは製作から20年が経過し今後、パーツの絶版も出てくるだろうと仮定し 純正に代用出来るモノを末永く使えるという発想からだ。
目指したモノは 『リプレイスメント』 訳すと代用品。
そして、代用品となれば、やはり純正の良さを損なうことは決して許さ れない。 しかし、マフラーを交換したいという思いはどこと無く交換しましたよと、主張したい気持ちも少なからずある。 そこで目指したのは純正らしく大人らしいマフラーと言うのだが。
このカタチが出来なければ、マフラーは造らない。『ウェル談』
とまで言い切り、当初より5ZIGEN矢野氏を困らせた。 しかし、ステンのタイコにステンのバンドで固定し、バンドからは 吊り下げ用のアームが伸びる。 そして、純正と全く同じ取り付け方法だというから リプレイスメントという言葉に恥じない。 そしてこのギミックだけでご飯お茶碗に3杯は食べれるであろう。
そして、コダワリの外カールテールエンドだ。 Be-1、PAOといえばこの外カール。 これもリプレイスメントと言う言葉に恥じない仕上げである。 ウェルはこの外カールの熱狂的な信者であることには間違いない。 そしてタイコ部にはJASMAの登録が施されロットナンバーが刻印された 俗称JASMAプレートがおしげもなくおごられた。 JASMA登録は5ZIGENとスピードウェル社サイドでは 絶対に必要な項目でもある。 今後JASMA登録の無いマフラーは車検に通らないという厳しい法規が出来るというお話。 そして排気音量は先にご覧頂いた通り、純正と同等を目指し、音自体もコントロールするという。 そこは大人らしいちょっぴり低音が響く仕様にアレンジが加えられた。 テールパイプ部とタイコ部の合わせ溶接にも注目してほしい。 高い技術が必要なTIG溶接だ。 しかも、合わせ部が溶接盛り以上にきっちり膨らんでいるのが良く解かる。 この合わせ面の膨らみが非常に大切だ。 タイコの端部、折り返しにも注目してほしい。 一枚の平板からタイコを製作するという5ZIGENサイドのこのマフラーに対する情熱が伺え知れるコトだろう。
これが、純正フロントピースだ。 このフランジ部から排気漏れを起こす車両が昨今続出している。 リヤピースは交換すれど、フロントまで交換された方は今までには少な いはずだ。
これが、フロントピース部の中間タイコ。 排気ガスは一時にココで減圧され、消音されるという。 ここでは、5ZIGENのマフラーに対する熱い思いとオーナーへの配慮が施された。
そう、タイコとパイプにステーが装着されたのだと言う。 おいおい、ただのパイプとタイコを補強しているのだろうよ、とお思いの方は残念賞だ。 これは車両中心部は車高が低くなりやすく、例えば踏み切りを想像していただきたい、 亀の甲のような踏切ぐらいが適当だ。 フロントタイヤが亀の甲を越えた辺り、リヤタイヤはまだ亀の甲に差し掛かっていない。 この状態は俗に亀になった!!というだろう。 そう、車高が元々低いというのではなく、フロントタイヤが障害物を乗り越えた時に、丁度 中心部は地面に対してすれすれの状態となる。 この状態でマフラーが地面や凹凸物に接触しても、中間タイコに引っかかることなく、滑るように 考えられているのだという。 ココにはマフラーを持つオーナーに対しての細かな配慮が存在するのである。
なんと、フロントピースのみでもJASMA登録がなされるという。 フロント、リヤとも、一つずつ装着したとしても、車検対応で、お国が認めたマフラーなのである。 まさしくリプレイスメントという言葉に恥じない仕上がりに。
左がスピードウェル×5ZIGEN、右が日産純正だ。 ここでは、同じ取り回しでの構造の変化が伺える。
写真59.jpg 純正品に対し、曲げが緩やかになっている。 しかも、この曲げをよくご覧になると、 純正ではくの字に加工されているのに対し、 スピードウェル社製ではサイクロンのように渦が巻く形状に。 より流速を落とさず、逃がしてあげるという曲げの技術が存在するのであろう。
ではマフラーの姿見をご覧頂こう。
少しタイコは大きくなった。 しかし、純正と同じ角度(ボディー外側へ向かって)にタイコが 向いているという、解かりにくいがコダワリもある。 しかし、このタイコの向きだが、かなりPAOの見た目が左右され、絶対に真似をしたいところでもあった。
君もこの写真でお茶碗三膳どうだ。
ウェルの『あとがき』
今回は純正パーツが生産終了となった後でも、純正と置換が出来る様 デザインにもこだわり、さらには経年の劣化に対して素材を選びぬき、 大人らしいマフラーを目指したわけだが、 さらにエンジンの燃焼効率を純正よりアップさせるべく開発が行われた。 デザインと性能両面を高い次元で確立し、まさに官能の美学を追求した。 最後に5ZIGEN本社でシャシダイナモにPAOを搭載。 パワーとトルクというマフラーの性能測定が行われ 結果は申し分なく純正以上の馬力が認められ晴れて発売開始となった。 『ウェルリプレイスメントマフラー』 スピードウェル社から本物の感動をあなたへ。 これからも熱い製品造りにご期待だ。